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星に誓う結び糸

更新日:2024年10月23日

それは高校生の時でした。

私はバスケットボール部で夏休み前あの時は、毎日暑かったのを覚えています。

部活が終わると友人たちと、来週に迫った「夏の七夕祭り」の話をして盛り上がっていました。

私の町は田舎の小さな町ですが、山間部に位置しているため星がきれいに見えることから

県外からも天体観測に訪れるほどで、伝統的な七夕祭りも有名でした。


私はいつものように祭りの準備を手伝っていると、急に強い風が吹き、かぶっていた麦わら帽子が空高く舞い上がり飛んで行ってしまいました。

帽子を拾いに普段はあまり行かない神社の裏手にある森の中に入っていきました。

すると、そこにはこれまで目につかなかったのが不思議なぐらい、存在感のある古びた祠がありました。

祠の前には笹がお供えしてあり、その笹には年月を経たようなボロボロになった短冊が細い結び糸で結ばれていました。


その夜から、私は奇妙な夢に悩まされることになります。

それは、笹が風に靡く音がする真っ暗なところを一人で歩いていると、着物姿の見知らぬ女性に追いかけられる夢でした。


私はあの日に見た祠の笹が気になり、もう一度行き短冊をよく見てみることにしました。

ボロボロになった短冊に書かれた文字はかろうじて読める部分には書いた人の名前と

「もう一度、あなたに会えますように」

と書かれていました。

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書いた人の名前は見覚えが無かったのですが、祖父に聞いてみると、

近所に住む老人の婚約者だった女性の名前ではないか?とわかりました。


私はその老人に会い、祠にあった笹とボロボロになった短冊に書かれた内容と書いた人の名前を伝えると、その老人はポロポロと大粒の涙を流しはじめました。

聞くと、老人は戦争に出兵し、婚約者とは生き別れとなり、

終戦後に帰国した際には、空襲で婚約者の行方も分からくなっていたそうです。

涙を抑えた震えた声で「その祠に連れて行ってくれませんか?」と言われました。


その夜、私は老人を連れてあの祠に連れて行きました。

その日は丁度、珍しく晴天の星空が広がる七夕の夜でした。

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